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3月-③
3月-③
体内で、開放感と失望感が入り交じる。
ストローでシェイクのチョコとバニラを混ぜ合わせた。
茶色と白が混ざったというより、茶色が白を濁した感じ。
全く覚えてなかったものは仕方ないけど、出来た筈の答えを間違うのは悔しい。
「米っちは得意教科があって良いなあ」
これだけは何があっても好成績、と自信が持てる科目。
「たった一つだけぞ」
「大学も世界史系?」
「出来れば世界史の研究家になり、知った情報を元に薄い本も書きたいものぞ」
それも付属するんだ。
「全教科まこと均整の取れた点を取れる、お主こそが賢帝よ」
「ハァ」
「また溜め息!」
「ゴメン、切り替える」
「元気を出すのじゃ。ほら、芋の配給である」
米っちが、あーん、とポテトを差し出してくれた。
「芋たん、シェイクだけではお腹空かないか?」
「強制徴収があるから、今月ドカ貧なの」
「どした?」
「従姉への出産祝い。可愛がって貰ったんだから、私と弟も金出して何か準備しとけってさ」
昭和の最後生まれで、何かと歳食ってる認定されてたお姉さん。
一番近い従兄とは2つしか違わないのに、大きな隔たりがあるような扱いだった。
「まことめでたい。この世に一人、ロリかショタが増えようぞ」
「お巡りさん、この人です」
フヒヒ、と目を細める。
「予定日まだ先だけどね。平成と新元号の狭間」
「おお。どちらになるか、特別な楽しみがあるではないか」
また、ポテトをくれた。
「良いのー。某達は平成ど真ん中であったからな」
「境目はやめた方が良いよ。何か、損してる」
何事も、グレーゾーンが一番生きづらそう。
どちらにもなれないし、仮に適正は隣の分類にあっても、無理矢理違う分類に入れられる。
「それで、もう一つの方はどちらぞ?」
もう一つ……。ああ。
「男。だから父親と弟が車の玩具送ろうとしてる」
ポテトを煙草っぽく咥えた。
「嫌そうだな」
「車は良いんだけど、実車1/24大の精巧模型は反対。
タイヤ動くし、ライト点くし、ドアなんかも開くから将来絶対喜ぶ!
遊べるようになるまでは、インテリアとして飾れば良いって言うけどさ。
自分達の趣味じゃん」
「細かい部品ある物は危ない気が致す……」
「米っちもそう思う!?」
思わず手を握ってしまった。
「ちゃんと対象年齢乳幼児向けのが良いと思うんだよ」
「禿げ上がる程同意ぞ。母君は何と?」
「母親はいっつも、皆で決めなさい、だけ。
自分の意見言わない。投票もしない」
「それでは、男二人相手に、試されるプレゼン力か」
「いっつも負ける」
外食するのに、ラーメンが食べたいと言っても、
あいつらがハンバーグが良いと言えば、そっちになる。
母親は、話し合ってと言いつつ、
貴女さえ折れれば丸く収まるのに、がひしひしと伝わってくる。
「粘るけど、多数決の圧力には敵わない」
そして、貼られた頑固者のレッテル。
いつも俺達に苛々突っかかって来るよな。
さっさと折れてくれれば、早く食事にありつけたのに、と。
「弟ムカつく」
「少数派になると辛いのう」
「米っちもそんな事ある?」
「某、B攻めA受けが好きなのに、A攻めB受けの方が圧倒的に多く、
それが正義だ!というジャンルにいた経験があってな。
少数派の孤独さ、肩身の狭さ、悪い事をしてる訳ではないのに責められてる感じ、凄ぉーく分かる」
「お、おう」
まずい。米っちの変なスイッチを入れてしまった。
「逆カプとは、同じ対象を見ている筈なのに、世界で最も遠い存在。月の表と裏にも等しい」
地球から見たら綺麗な月が、
裏では集合体恐怖症を震え上がらせる穴ぼこだらけという、
鳥肌という鳥肌から冷や汗が吹出す恐怖の存在へと変わる。
そんなレベルでヤバいのか。
「どのカプを好きになるか、人それぞれ。
逆カプが地雷で、やめて、目に入る所に置かないで、
という気持ちも痛い程分かる。だがな」
一人一人は小声で言ってる心算でも、大勢になると結構な圧力。
「米ちゃんも、ちょっと小声になろうか」
公共の場だから。私までそっち系に見られるから。
「そもそも、正規作品を腐った目で見るのが、少数派なのでは」
「仕方なかろう。勝手に妄想が膨らんでしまうのだ」
開き直ってるわーこの子。
「しかし、某はたとえこの世に腐界が広まり、腐に対し不快になる人の方が珍しくなったとしても、
一人でも嫌ならば配慮し、検索避けや回避用のタグを付け続ける」
「よーしよし。偉いぞー」
偉いんだろうか。少なくとも原作者に対しては、悪い事してるような。
そう言えば、私の好きな漫画に対して腐った話をした事はないから、本当線引きはきっちりしてたんだね……。
「と言う事で、推しを、従姉君に選んで貰ってしまえば万事解決かの?」
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