第1章 ブラック・シティ(黒の都市)section3

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   ニリーアがシャワー室から出ると、籠の中に薄い水色のブラとショーツ、薄いターコイズブルーのワンピースが入っており、床にはウルトラマリンブルーとホワイトの混ざったスニーカーが一足置いてあった。 (全部、青系・・・? セリテアの趣味?)  ニリーアはそう思いつつ下着から身に付け始めた。  いつの間にやら、そっと入ってきたセリテアか、半分仕切ったカーテンの陰からセリテアが話しかけてきた。 「サイズはほぼ合っていると思います」 「・・・この色は、あなたの趣味なの?」  ニリーアはブラを着けながら聞いた。 「いえ、チェスコン様の妹のチェルシル様の服だったものです」 「・・・だった?・・・それはどういうこと?」とニリーア。 「チェルシル様は2年前にお亡くなりになりました」  セリテアは機械的な口調でそう言った。 「え?!何があったの?!」  ニリーアは驚いて叫ぶように言った。 「2年前、グリナダ様とチェルシル様の二人でゴーザ・ギルドと戦闘を行っていたときです・・強力な敵の攻撃でチェルシル様は殺され、グリナダ様は重症を負いましたが、その後チェスコン様が駆けつけて敵を倒し、グリナダ様だけが・・助かりました」  セリテアは人形らしからぬ雄弁さでそう答えた。 「・・・そういうことだったのね・・チェスコンさんがグリナダさんを(かたき)と言った意味は・・・」  ワンピースを着て、スニーカーを履いたニリーアはカーテンを引き、セリテアの前に立った。 「で・・・チェスコンさんは、最初から私をここに連れてくるつもりだったのね?」  ニリーアは確かめるようにそう言った。 「はい。チェスコン様の言葉を借りて説明すれば、スカウトということだそうです」  セリテアはまたも機械的な口調でそう答えた。  一瞬にして自分の役割を悟ったニリーアは、少々青ざめて身動きが止まってしまった。 「・・・これは、今さら断ることはできないわよね・・・?」 「さあ、ここから後は、私には分かりませんので、チェスコン様に直接尋ねてください」  セリテアはそう言い終えると、またデジャブのようにベッドに腰をかけて・・動きを止めた。  ニリーアは息をスゥーッと吸い込むと、意を決して部屋のドアに向かっていった。
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