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「俺たちが君に目をつけたのは1年前のことだった」
その発言にニリーアはかなり驚いたが・・目でチェスコンに話を続けるように促した。
「ニリーア。君が両親を亡くし、フランジール家にメイドとして雇われたのは12歳のときだった。それから3年間は特に大事なく過ぎた・・・しかし、君が15歳になったときに事件は起こった」
チェスコンはそこで一旦言葉を切ったが、意を決したようで、更に話を続けた。
「フランジール家で君がお世話をしていたジェリアお嬢様はそのとき14歳だったが、彼女のお気に入りだったオンジーロ家の若旦那ビーラーが君の美貌に目を留めた・・・そして、あるパーティの夜、君の弱い立場を利用してビーラーは無理やり君を犯した!」
ニリーアは驚くと同時に恥ずかしさと悔しさでチェスコンを思わず強く問い詰めた。
「なんで?!あなたがそこまで知っているの!?・・・1年前だってさっきは言ったじゃない!!」
「ニリーア・・・すべて話す。頼むから最後まで聞いてくれ」
チェスコンは右手で彼女を制する仕草をして、真剣な眼差しで彼女を見つめ返したので・・ようやくのこと、ニリーアは自分を抑えた。
「・・・そして、そこからジェリアの君に対するいやがらせが始まった・・・最初は世間に良くあるいやがらせ程度だったが、君が音を上げないことに業を煮やしたジェリアは、自分の父親にありもしないことをたっぷりと言い含め、ついに君をボディガードの実験台にするように仕向けた」
そこまで聞いてニリーアは過去の事実の辛さに耐えかね、胸を右手で押さえながら深く俯いてしまった。
彼女の頬を一筋の涙が流れ落ちたときに、いつのまにか人形のセリテアが彼女の背後に来て、テーブルの上にあったニリーアの左手に優しく彼女の手を重ねてきたことに、ニリーアは気が付いた。
そんなニリーアを見てもチェスコンは心を鬼にして容赦なく話を続けた。
「そして父親のボールレンは、君を私設研究者の実験台にした。1つは通常通りの極微機構体の注入だったが、後2つはDNAの相互作用の臨床結果の無い昆虫と哺乳類の遺伝子をDNAキャリアウィルスを用いて注入した」
チェスコンはそこで自身の頬の青黒い何本かの傷に指を触れた。
「研究者の予想では、君はPECO(PErfect Chimeric Organism)(完全キメラ生命体)(ペコ)になるはずだった・・・だが、予定通りにはいかなかった。キメラ生命体の特殊能力はほとんど出現せずに・・その副作用で君の頬や体には赤黒い筋が何本も走っている」
(えっ!?)ニリーアは自分がシャワーを浴びている姿を覗き見られたのかと思い、思わず両手で胸を覆った。
「いや、誤解しないでくれ。君がシャワーを浴びたところを見たわけじゃない。密偵からの報告さ」
チェスコンはあいかわらず視線をニリーアから外さなかった。
「密偵って、誰なの?!」ニリーアは思わず尋ねる。
「・・・それは、今は言うことはできない。もしそれが漏れたらその者の命は無いだろう。俺たちも危ないがね」
チェスコンはそう言いながら、ちらりとニリーアの後ろにいるセリテアを見やった。
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