第1章 ブラック・シティ(黒の都市)

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第1章 ブラック・シティ(黒の都市)

   ざんざんと降り続く雨の中、ブラウスが透けるほど濡れそぼった姿のまま、一人の少女が膝を抱えた姿勢で、薄暗い回廊の端にうずくまっていた。    雨に濡れて良くは分からなかったが、少女の頬には幾つもの赤黒い筋が見え、その上を幾つもの涙の筋が流れ落ちていた。  薄黒い雲が渦巻く空からは、時々、(わず)かな雷光とともに、ゴロゴロと唸るような小さい雷鳴が聞こえてくる。 (...もう、このまま、動きたくないな...)   少女は、うずくまった姿勢のまま、涙に濡れた顔を膝に埋めた。  ......  それから、幾分かの時間が過ぎた後、不意に彼女の頭上で低い男の声が聞こえた。 「・・・おい」 (・・・男の声・・・誰?・・・でも、もうどうでもいい・・・)  男の声に、彼女は更に顔を膝の中に埋めていった。 「お前、CLOI(クロイ)なのか?」  男の言葉に、少女は思わず顔を上げ、その男の顔を見やった 。  男は重たげな灰色のフード付きレインコートを(まと)い、その顔は半分程フードに隠れていたが、おもむろにフードを背後にめくり上げ、その素顔を少女に見せた。  その頬には、少女のものとはまた違った青黒い縦筋が何本か走っていた。 「俺もそうだ」  男はそう言うと少女の前に回り込み、しゃがんで正面から彼女の目を見た。
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