第四夜 ねぎま

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 そんな中、公園の一角に保護者なしに遊びに出すかな、みたいな子がひとり遊びをしていた。  まだ赤ん坊みたいな幼さの残る、見た目から言えば幼稚園くらいか、てえ子だ。  まあ、何歳になったら外遊びにひとりで出すかも家庭によってそれぞれかも知れないけどな。今の世の中、危ないヤツも多い。  色んな意味で、まだひとりで出すにはちょっと早いんじゃないかな、てえ感じの子だったよ。  小さい子供てなあ、何にでも興味を示すもンで、何にでも触りたがる。  ご多分に漏れずその子もそのようで、小さな茂みの前で座り込んじゃあ何かをじーっと見詰め、そーっと手を伸ばしちゃあキャッキャと喜んでる。  そうやって公園の中で遊んでる分にゃあ大事は無いかも知れないが、それにしてもひとりでほったらかしといて大丈夫なのかね。  他の子たちは自分の遊びに夢中だしベンチのじいさんは舟を漕いでるよ。  子供はまた何か新しい興味の対象を目に止めたようで、回りも見ずに真っ直ぐ歩いて行った。  どうやら、その先にある水飲み場に興味を持ったらしい。  いや、もしかしたら。  水飲み場の上に置かれた、どこかのスーパーのポリ袋が目当てなのかも。  微風にひらひらと揺れるその持ち手部分を、どうもじっと見詰めてるようだったからだ。  危ねえなあ。  何か硬い物でも…空のビンとかが入っていたら怪我をしちまうだろう。  他の子供たちも老人も相変わらずで、その子供に注意を向ける者は誰も居ないようだった。  だからオレは柵を跨いで子供に向かった。  ビックリさせちゃあいけないから、ドタバタと駆ける音を響かせないよう、ゆっくりと、それでも大股に急げるだけ急いで。  だが、公園の端のオレが居た位置からは水飲み場は遠く、オレが子供に追い付く前に、子供は水飲みに辿り着いて袋に手を掛けた。  袋に入っていた何かは袋ごとバランスを崩して水飲み場から子供の頭の上に落下し、弾みで袋の中身が飛び散った。
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