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わらわらと紙屑が、カランカランとペットボトルが地面に転がった。
どうやら家庭で出たゴミを、よりにもよって、あんな所に放置したヤツが居たらしい。
何で家庭のゴミだって判るのかって?
だって、な。
バターの包み紙だのサラダ油のペットボトルだのが混じってるんだぜ。
タチが悪いにも程があるだろ。
その、バターの銀紙だのマヨネーズのチューブだの、サラダ油のボトルだのが振り掛かってきたもンだから、子供は驚いて火が点いたように泣き出した。
その声に他の子供たちがようやくその子に気付き近寄ってきた。
だが、ベンチのじいさんはこっくりこっくりと、まだ夢ン中のようだった。
集まって来たはいいが、その子供たちは、だが、すぐには助けの手を差し伸べようとしなかった。
その子がボトルに残っていたサラダ油やらバターでベタベタに汚れていたからだ。
「あーあ」
「この子、どこの子だろう」
「誰か大人の人、呼んでこようか」
口々に言うが、誰も遠巻きにしたまま動かない。
子供心にも助けたいとは思っているのだろうが油にまみれたその姿に手を出しあぐねているようだった。
―逢魔が刻。あるいは逢魔時か。そんな言葉が頭に浮かんだ。
昼から夜に移り変わる黄昏時に、あの子は魔に魅入られちまったんだなあ。
オレは立ち止まった位置から再び子供に駆け寄ろうとした。このまま放っておく訳にゃいかねえもんなあ。
すると。
何時の間にやら子供の目の前に不思議な姿の男が立っていた。
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