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データに入っていたのは、空や風景の写真だった。機密や個人情報の類はどこにも無かった。
迫田は脱力したように床にへたり込む。
シャワーの音は止まない。佳乃はまだ戻らない。
立ち上がり、キッチンを通るその目の端に、ミートソースの残骸が映った。ソースに浸かった挽肉の中で何かが光っている。迫田はそれを拾い上げる。
ソースに埋まっていたのは赤いマニキュアの爪だった。
迫田は、包帯をした佳乃の左手を思い出していた。
迫田は吐き気を堪えられず、洗面室に走る。洗面台の向こう、磨りガラスのバスルームが見える。迫田はドアを開ける。無人の浴室にシャワーの音が木霊する。
洗面台の鏡に、青白い自分の顔が映っていた。台にはいつか見た薔薇のピアスと、封筒が置かれてあった。
“100人目の男から貰ったもの”と、封筒には書いてあった。
迫田は手紙を開く。
そこには、“陽性”と、三文字のアルファベットがあった。
完
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