缶けり日和

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「てっちゃん…… てっちゃんか…… どうしてるんだろう……」 飲み終えた缶コーヒーを地面に置いて帰ろうと、少し歩きだしたその時だった。 薄暗くなった公園の遊具の後ろ辺りに人影を感じた。 「だ! 誰!?」 ただならぬ不気味な雰囲気に思わず大声を出してしまった。 その人影が凄い勢いでこちらに向って走ってきた。  明らかに大人なのだろう。  表情まではハッキリとは見えなかったが、それが子供のようなあどけない笑い声と共に走ってきたのだった。 その笑い声は、置いてあった空き缶を思いっ切り蹴飛ばした時には奇声に変わっていた。 静まり返った公園内に空き缶の転がる甲高い音と走り去る足音だけが響き渡った。 また静かさだけが公園にやってきた。 その出来事に しばらく呆然としていた俺だったが、 「てっちゃん!? てっちゃんだー!!」 外灯の明かりに照らされたその姿は てっちゃんだった。 あれから35年も経っているからさすがにオジサンの姿だったが、気が付くとそこに居て、いつもニコニコしていて、坊主頭で、服がいつも汚れていたあの、てっちゃんに間違いなかった。 「もしかしてあれからずっと、あの日からずっと、てっちゃんは缶けりを続けてたんだ!?」 「だからこそ捜索したって隠れ続けてたんじゃ全然見つからないわけだし!?」 「もしかしてあの時から何となく感じていた人影や視線、遠くで聞こえる空き缶を蹴る音も!?」 「あぁー! そうだったのか てっちゃん! 俺も、俺も缶けりに入れてくれー!!!」
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