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部屋の前で足を止めた彼女が、すっと膝を折り、綺麗に頭を下げたのを見て、靖幸はその仕草に、惹かれた。
目が釘付けになる。
綺麗な、きめ細かい肌と、サラリとした髪を肩でカットしていて、スラッとしたスタイルはドレスを着せても似合いそうだ。
オリエンタルな顔立ちは着物も似合いそうだし、外国人にも好かれそうな雰囲気。
しかし、少し頑ななその態度は、望まず、この席に座らされている感があった。
ん…?
妙齢の男女が、顔を突き合わせるこの状況……。
もしかして、お見合いと思っている?
そんなんじゃないんだけど。
なるべく顔に出さないようにしているけれど、そこはかとなく漏れ出る嫌々感がむしろ、好ましくて。
ゆーちゃん、と親しげに呼んだら、急に由佳の表情が変わり、柔らかくなる。
そんな顔で、もっと見て欲しいって思ったらいけないだろうか。
仕草は綺麗で、見惚れるばかりで、見た目も好みで、なおかつ、偶然にも子供の頃からの知り合いでもあり、理想的だった。
そして、きっと、お互いの家の状況が似ていて、何も靖幸は計算しなくていい相手。
そんな相手には、なかなか出会えない。
自分のことを好きでなくてもいい、と思った。
その方が信頼できる。
それに、今好きじゃなくても、気持ちなんて変えられる。
振り向かせることだって、出来るはずだ。
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