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「そんな人、います?」
「いますよ。以前接待で、こちらをご案内した時に、お客様が得意げにフロントに言いましたから。」
その時の大藤を想像すると、さらに由佳は笑いが止まらない。
「っ…ど、どうされたんですか?」
「フロントが優秀で、タクシーですね、と日本語で返していましたけど。こちらが恥ずかしかったですね。当の本人は得意げなんですから。」
その後、ミスタータクシーは元気か?と聞かれ、笑い話になっていることを悟ったという。
ここ最近、ゆっくりと大藤と、過ごせることは少なかった。
だから、こんな時間を大藤と過ごせるのが、由佳には嬉しい。
「なんか、幸せ。」
「可愛いですね。俺の由佳は。こっちこそ、いつも幸せな気持ちにさせてもらっているのに。」
「またまたー。」
「チュニックにショートパンツ、可愛らしいですけど、由佳の素足を皆に見せるのは、ね。」
「ダメ…ですか?ビーチリゾートだから、OKかなって…」
「可愛い過ぎ。」
来たタクシーに乗り込むと、中で、大藤が由佳の手をきゅっと握る。
運転手にさらさらっと言われた英語は、由佳には、聞き取れなかったけれど、大藤は何か返していた。
それに対して、運転手は
「WOW!congratulations」と、笑顔が返ってくる。
「なんです?」
「可愛い彼女だねって言うから、婚約者だと言ったんです。」
「…っこん…」
「ん?」
緩く顔を覗き込むのはやめて欲しい。
嬉しすぎて、頬が緩んでしまっているから。
そんな風に思ってるの…そんなサラッと言わないで…。
また、運転手が大藤に話しかける。
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