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ランチボックスのような発砲スチロールの容れ物に入っている、野菜炒めをぱくん、と食べながら、意外な美味しさに由佳は驚く。
「あら、美味しい。」
「そうなんです。ジャンクフードもありますけど、結構美味しいんですよ。」
大藤の手には山盛りのポテトだ。
「確かに、ジャンクフードですね。」
「それ、食べたいな。食べさせてくれます?」
ふと見た大藤の手がふさがっていて。
これって、食べさせてって…。
一瞬、躊躇ったけれど、由佳は大藤の口に野菜炒めを入れた。
「ああ、本当だ。なかなかですね。ほら、ジャンクフードもあげますよ。」
「もう!それ、おいもに失礼です。」
ポテトを差し出された由佳は、それをぱくっと口に入れた。
2人で、外で、はしゃぎながら食べるご飯は、思ったよりも美味しく感じて、楽しい時間が過ぎてゆく。
「そろそろ、戻りましょうか。」
大藤に言われて、少し惜しいような気持ちになる由佳だった。
まるで、後ろ髪を引かれるようなその仕草に、大藤はポン、と由佳の頭に触れる。
「来たかったら、また、来ましょう。」
「はい。」
これからも、ずっと一緒なのだから。
大藤の仕草や、言葉や、こうしているいろんなことにそんな想いを感じて、由佳は、とても、幸せな気持ちになった。
そして、きゅっと、大藤に抱きつく。
「どうしました?」
その優しい声も好き。
「久信さん、好きですよ。」
大藤は由佳の肩に手を回す。
「俺も、好きですよ。」
海外の空気は日本と違って、嗅いだことのない、甘い花の香りが鼻をくすぐる。
海の風と、異国の雰囲気。
今日見た、薄紫色の空と、綺麗な海、波の音も、サラリとした空気も。
嗅いだことのない、匂い。
見たことのない景色。
一緒に同じ時間を過ごせることが、こんなに嬉しい。
きっと、忘れない。
こういうものを、永遠、と呼ぶのかもしれない。
自然、その場で交わされたキスは日本ならば、確かに出来ないものだったかもしれなかった。
しかし、奏の結婚式に参加し、サイパンのビーチリゾートも満喫し、日本に帰ってきた空港で、由佳は思いもかけない人の姿を見ることになる。
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