離脱

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「由佳…、俺を誰だと思ってます?」 大藤から返ってきたのは、そんな言葉だ。 「もし、家のことに関わるなと言うなら、今すぐ車を降ります。けど、由佳が、俺の知らないところで苦労したり、泣いたりするくらいなら、そんなのは巻き込むとは思わなくていい。 むしろ、苦労を共にしてくれと言える覚悟があなたにないのなら、このまま関係は終わりにしましょう。」 終わり…?! 由佳はどきん、とした。 大藤の表情は、いつもと変わらない。 「やだ…。そんなの、無理です…、や…。」 俯いて、由佳は首を左右に振る。 大藤の膝に置いた由佳の手が震えていて、ぽたっと雫が落ちる。 「由佳…どうしたい?」 「…ぅ…でも、でも…」 「簡単ですよ。助けて、って言って。」 俯いてしまった由佳の顔に、手のひらを添えて、大藤は自分の方に向ける。 泣いているその涙を、指で拭った。 「どんなことでも、由佳を泣かせるなんて、俺は許しませんけど。」 「久信さん…。」 「どうしますか?このまま終わりにするか、助けてって言うか。」 その瞬間、様々なことが由佳の頭をよぎる。 このまま、もういいと言えば、大藤は迷わず車を降りるだろう。 そして、二度と由佳と触れ合うようなことはしない。 顔を合わせても、他人のように振舞われるか、他の人と同じような作ったような笑顔を向けるだけだろう。 それが、自分に耐えられるのか。 けれど、巻き込みたくない。 その気持ちは強くある。 「だから、俺を誰だと思っているのかな?」 大藤はその、由佳の逡巡を読んだかのように笑う。
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