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「そもそも、その気持ちがなければ、先日もお手伝いしたりはしていないです。けど、由佳も…、絋さんも…、今、助けがいるんではないんですか?
お手伝い、させてくれないのかな?由佳。」
由佳の頬を伝う涙は止まらない。
「ごめんなさい…久信さん、大好きです。お願いします。助けて…っ。」
大藤は由佳を、思う様抱きしめる。
「よく出来ました。本当に、困った子ですね。だからこそ、俺も全てをかけて守りたいって思うんですよ。愛してます。由佳以上に愛せる人なんていない。
あなたこそが、俺の存在意義なんだ。いい加減それを分かってください。」
巻き込みたくはない。
由佳はそう思って、そうすることが、大藤への気持ちだと思ったけれど、大藤にとってはそうではなかった。
苦労を共にする覚悟…。
由佳も大藤に思いきり抱きついた。
「久信さん…っ。」
「それに…、先程空港で、翔馬さんの前で思い切り2人で離脱してきましたからねえ…。」
ぼそりと聞こえるその声は、笑いを含んでいた。
今更ながら、それに気づく由佳だ。
「そ、そうでした!!どうしよう…。」
「まあ、尋常ではない事態が起きたのは察しはついたでしょうし、由佳、もう頃合いですよ。」
「頃合い…?」
「お付き合いしていることをオープンにするってことです。話し合いはついたと思っていいですね、沢木さん、病院へお願いします。」
沢木は黙って車を発進させた。
絋も黙って、前を向く。
沢木は運転しながら、その絋の頭をふわりと撫でた。
緊迫した事態のはずであるが、穏やかな空気が車の中には満ちていた。
大丈夫。
この人がいれば…。
由佳も、絋も、お互いのパートナーに強く感謝した瞬間でもあったのだ。
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