決断の夜

3/10
前へ
/159ページ
次へ
顔を真っ赤にして、照れているのが可愛いから。 時折、誤って肌に触れてしまって、慌てて手を引っ込めてしまうのも可愛い。 こんなに、奥ゆかしいのに、いざ、となると途端に、驚くほど大胆になることがあるのだ。 その時は、大藤を信頼して、気持ちを預けてくれているから、こんなに大胆なところを見せてくれているのかと思うと、ますます可愛い。 「え…っと、下も?」 「もちろん。」 そんなあれこれを考えていたから、臨戦態勢なのは仕方ない。 由佳は一瞬、迷って、ズボンを下ろし、トランクスに手を掛けて、ふと、恥じらう。 その間に、大藤も由佳のパーカーを脱がせ、ショートパンツを下げていた。 意を決したように、由佳が下着を下げたので、大藤は、足をどかした。 「お風呂、入りましょうか。」 「え…あの、…それ…は…。」 由佳の目がそっと逸らされつつ、そこ…と、指をさす。 「いろいろ考えていたら、つい…ね。あとでしっかりこの分は回収させてもらいますから、大丈夫ですよ。」 「回収…。」 大藤がにっこり笑うと、由佳が笑顔を一瞬引きつらせたのは見ないフリをした。 洗面所の分は、しっかりベッドで回収し、眠ってしまった由佳を見て、大藤はその髪をさらりと撫でる。 すやすやと寝ているその姿は、愛しくて守りたいものだ。 「必ず守りますからね。」 サイドテーブルに置いていた眼鏡をかけて、大藤はベッドを降りる。 そして、書斎に向かった。 ドアを開けると、壁際の本棚から迷わず1冊のファイルを、取り出した。 まさか、また使う日が来るとは思わなかったが…。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6566人が本棚に入れています
本棚に追加