朝が来るまで

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朝が来るまで

「久信さん…あ、や…」 ワンピースの上から、身体のラインをなぞられて、由佳は細い声で抵抗する。 だって、絶対幻滅する。 「こんなに、キスだけで感じて、色っぽくなっているのに?」 「でも…、私、恥ずかしい。」 「どうして?」 「だって、…ナイスバディじゃないから。」 「は?!」 身体を少し離して、まじまじと見られる。 余計に恥ずかしくて、何となく身体を手で隠した。 「色気、ないですよね?」 少し前まで、お付き合いしていた人にそう言われたのだ。 背も高すぎだし、胸もない。 色気を感じないから無理。 いちばん、そばにいて、尊敬する上司でもあり、同僚でもある元宮奏が、またやや小柄で、くりっとした瞳が可愛くて、女子でも羨ましくなるほどのナイスバディなので、なおさらなのだ。 奏先輩みたいな人のが、きっと可愛い。 「…っは、何をバカなことを…。」 身体を隠していた手を握られて、頭の上にまとめられる。 わざとのように、下から上までゆっくりと、視線を動かされて、それはまるで視線で、犯されているかのよう。 恥ずかしくて、顔を伏せてしまう。 だって、あの冷静な瞳が、見るから。 さっきから、鼓動が激しくて、息もできない。 「由佳…こっちを見て。」 顎を持ち上げられて、つい、その大藤の顔を見てしまう。 眼鏡の奥の瞳は、思ったよりも欲情に濡れているように見えた。 そんな、艶っぽい顔で見られたら…。 「さっきも言ったでしょう。由佳、綺麗なんですよ。あなた。」 「私は自分の身体、コンプレックスだらけなんです…。」 だから、恥ずかしくてこんな時、堂々とすることなんか、出来ない…。 「きゃ…。」 黙って、大藤に急に横抱きにされたから、思わず声が出る。 寝室の、ベッドの上に降ろされて、大藤が由佳の上になり、ネクタイを緩める。 「なんて顔してるんです?」 「本当に…無理なんです。どうしよう…すごい、緊張します…。」 由佳は腕で口元をおおって、顔を隠す。 もう、心臓の鼓動は、ばくばく言うし、多分顔は赤いだろうし、大藤は色気たっぷりだし。 「大胆なのか、恥ずかしがりなのか、分からないですね、あなたは。」 くすくすと聞こえる笑い声。 大藤は、外した眼鏡を、ベッドの横のサイドテーブルに置いた。 1つ1つの動きが、これからすることを想像させて、由佳をどうしようもない気持ちにさせる。 「で、なにがコンプレックスですって?」 大藤の、シャツのボタンが外れていて、そこから胸元が見えていた。 由佳は思わず、両手で顔を覆っていた。 「由佳?」 本当に、無理。 心臓、壊れそう。 覆っている手を、外されて、肘の内側から、二の腕の内側に向かって、ゆっくりと唇で辿られる。 「…んっ…。」 見た目が冷たそうで、ストイックそうな顔して、さっきから、やらしいんだもん…。 「身体がコンプレックス…どこが…?こんなに綺麗な身体で?しかも、感じやすくて、エロい…。」 「久信さんのが、エッチです…。」 「褒め言葉ですね。」 ふっと笑って、目を細められる。 大人の男ってやつは…。
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