朝が来るまで

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「ほっそりしていて、真っ白で、すごく、そそられる。この、首も…耳も…。」 耳元に声を注ぎ込まれて、身体をよじって、横を向く。 「誘ってるんですか?」 い…ったい何を…。 向けていた背中には、ワンピースのファスナーがあり、ゆっくり降ろされてしまった。 「あ…。」 「本当に…大胆な…。」 ふっと笑った、その息が背中にかかる。 肩からするりとワンピースを脱がされて、肩にも、背中にもキスを落とされて、由佳の身体はびくんと跳ねてしまう。 「ほら…こんなに感じやすくて?どこが?」 「む…ねとか、ないですし…。」 するっと、手が前に回る。 「…ん…、あ、やんっ…。」 「なくはないでしょう。ちゃんとあるじゃないですか。」 大きな手の平で、揉まれるようにされて、身体が反り返る。 「もっと…?本当に、大胆…。」 「ん…ちが…」 「違わないでしょう。感じているくせに。この…、背中から、腰のライン、すごくセクシーですよ。」 そんなことを囁かれながら、唇で辿られるのは…。 「細いけど、ガリガリではないし、女性らしい柔らかさや丸みがあって…、私は好きですよ。由佳の身体…。」 なによりも…と一際低い声。 「感じやすくて、こんなことで、もう身体が色づいて、目元が潤んでいるのが…たまらない…。」 「っあ…んん…。」 「声も…、誘うように甘い声…。由佳に、その声でいやらしいことを言わせてみたい。」 「や…、そんなこと、言わないで…。」 「ね?大胆かと思うとそんな風に恥じらったりするから。」 たまらないですよ。と唇を重ねられる。 ゆるく唇を舌でなぞられて、由佳もそれを受け入れた。 ちゅ…、くちゅ…と粘膜の絡まる隠微な音がしん、とした寝室に響いて、その音でもぞくん、とする。 柔らかく、絡まる舌に頭が蕩けそうだ。 「気持ち良さそうな顔ですね。」 「はい…。気…持ちいい…。」 「もっと、気持ちよくなりましょうか…。」 この人、絶対にダメ…そう、どこかでは分かっているのに、閉じ込められた腕が気持ちよくて、その視線を捉えたくて、由佳は目を閉じた。 「ん…」 由佳が朝日の中、目を覚ますと、やんわりと自分を包み込む腕。 真横に整った顔。 彼は、とてもよく寝ている。 え…と、起きなきゃ。 するりっとベッドを抜け出し、さかさかっと、ベッドの下に落ちている自分の服を着る。 少し、ベッドの方を振り返ると、大藤はまだ、目を閉じていた。 由佳は、そっと、部屋を抜け出して、玄関先においたままだった荷物を取り、こっそりと部屋を出たのだった。 ど…どうしよう、イタしてしまった…。 姿を見たことはあると言っても、ほとんど初対面の人だ。 確かに、ほのかな憧れのようなものはあったけれど、その後、彼には誠実さは求めてはいけないと知った …それでも。 思い出にしよう。 そして、なかったことに。
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