第1章 北の大地だ、ジンパでほい

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「大学主催の安全講習でいってたでしょう。『いいデータを取るコツはこだわりすぎないこと』だって」 「春先にあった安全講習? それならまだ着任してないもん」  投げやり気味に朋子は試料室のZ軸を基準値に戻す。腹がぐうと音を立てた。 「ご飯食べていなの? もう夕方よ?」 「装置の予約を入れてたから」 「キャンセルすればいいじゃないの」 「そのあいだに予約が入ったら困るじゃん」 「六月は例年それほど混まないわ。心配ならランチ時間分をブランク入れて予約するとか」 「ずっと装置のそばにいないと別の作業が入っちゃうんだよ。岩ポンから電話を受けたらその後の測定ができなくなっちゃう」
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