第1章 北の大地だ、ジンパでほい

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 なんでかなあ、と肩をすくめて操作に戻る。戻るんかい、とばかりにペンギンたちが動きを止める。それからいっせいに振り返り、息を合わせてフリッパーを朋子の足へ叩きつけた。 「いったあっ。何すんのよっ」  悲鳴をあげても操作は続ける。  朋子が使っているのは走査型電子顕微鏡。すきゃにんぐ・えれくとろん・まいくろすこおぷ、略してSEM(セム)である。  いろんなことができるデカい顕微鏡である。  タングステンフィラメントの熱電子銃タイプで2次電子像だけでなく反射電子像も観察でき、エネルギー分散型X線分析装置EDSを装着しており低真空モードにも対応、そのほかうんぬんかんぬん、という大型装置であった。  ざっくりと数万倍率まで像観察ができる顕微鏡である。  工学部の人間なら一度は耳にしたことがあるメジャーな装置だ。理学部出身の朋子でもこうしてほぼ毎日利用していた。
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