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Marigold -1-
私は王都から西に少し離れた、ある小さな農村に生まれた。
この地域は珍しい薬草が僅かに自生するだけで、村を興せるような観光資源や、これといった特産物がある訳でもない。しかしその環境を、村人達は甘んじて受け入れていた。
まるで時が止まっているような、停滞の象徴であるこの村が、私は嫌いだった。
「この村は、怠け者ばかりだ」
幼い日の私は不満を漏らした。
「でも彼らもまた、昨日より今日を、今日より明日を、良く生きようとしているわ」
薬草の葉を丁寧に摘みながら、母が答える。母は魔法薬を扱う魔女だった。
「タゲスは、医療魔法を学んだら良いと思う」
「何で?」
医療魔法は、医者が科学的に治療する医学と並び、魔法使いが薬草や回復魔法を用いて治療する技術のことだ。
「この村に医者はいない、だから私は魔法薬を作っているの。正当な報酬を受け取れなくても、皆が助かるなら構わないと思っているわ。でも、あなたはそれが不満なのでしょう」
少し困った顔をして訊く母に、私は決まり悪そうに頷いた。
「別に恥じることはないわ。それも一つの考えだもの。
医療魔法研究者の地位は高いわ。あなたは、王都の学校へ行って、最高の教育を受けなさい。あなたの才能は、きっと評価される」
私は、母の申し出に驚いた。王都にある魔法学校の学費は高額だからだ。
「母さん……僕、頑張って特待生になるから」
「そう?それは助かるわね」
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