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Marigold -Last-
その後はもう、滅茶苦茶だった。
剣士の魂を救おうと、ポルポラは精霊魔法を使った。
彼女を封じていた特別な鎖は、魔法を使おうとすれば術者の魔力を吸い取り、その骨肉を砕こうと締め付ける。
しかし魔法の代償は、不死の命そのものだった。贄に価値があり過ぎて、もはや魔力の暴走と化した魔法の前には、何もかもが無意味だった。
私の積み上げて来たものが、一瞬で灰燼に帰す。
崩れゆく地下牢の中で、私自身も致命傷を負い、さらに瓦礫ごと光差す地上へ投げ出された。
その一瞬に見えたのは、青い空に輝く、金色の太陽ーー。
それは私が生涯、一番にこだわり続けてきた、根源とも言える何かを想起させた。
私の体は地面に叩き付けられた。
その時点で私は殆ど死んでいたが、まだ僅かの意識が残っていた。それもすぐに無くなるのだろうが。
目の前には、金色の花が見える。
ーー「母さんはね、マリーゴールドが好きよ。太陽の花みたいでしょう」
母が、好きだと言っていた花。
そうかーー私は思い出す。
最初は、これが始まりだった。
ずっと昔、まだ子どもだった頃ーー
小さな魔法コンテストで優勝したら、金メダルが贈られた。
一番と認められた事は当然嬉しかったが、それよりも私は、このメダルを母にあげたいと思った。
金色に輝く丸いメダルが、どこかマリーゴールドの花に似ていると感じたからだ。
私は別に、一番になりたかった訳ではなかったのか。
最初はただの、そんな思いだったというのにーー
ーー私は一体、どこで間違えた?
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