2人が本棚に入れています
本棚に追加
フワリと、何か柔らかい存在が、私を覗き込む気配を感じた。
(これも、憐れな命か?)
意識が流れ込んでくる。
ポルポラの召喚した、樹木の精霊だった。
(ポルポラの最期の願いを聞き届けた。憐れな命に、慈悲をと。
ーーしかし実際のところ、私にはお前が最も、憐れな命に見える)
精霊は、草が風に揺れるような音を立て笑った。
私は精霊に問うた。
(……貴方が、私にも慈悲を与えることを……ポルポラは、赦さないだろう)
その直接的な答えは返ってこなかったが、精霊は微笑んだ気がした。
(見事な花壇だ。丁寧に手入れされている)
花壇ーー花壇か。
屋敷の前に、私が作ったものだ。それは無事だったか、と安堵した。
(のう、お前は、すぐに自分に心を許したポルポラを、愚かだと思ったろう)
(……ああ)
(それは違うぞ。あの娘も、この花壇を見たのだ。
お前はおよそ悪人なのだろうが、樹木の精霊はお前が好きだ)
そして精霊は、ようやく私の質問に答えた。
(あの娘が我々に伝える言葉は、いつも抽象的で、戸惑う。
憐れな命が何を指すのか、とんと判らん。
しかし私には、お前もそれに含まれるように思う。
ポルポラはきっと、お前を赦すよ)
最初のコメントを投稿しよう!