Marigold -Last-

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 フワリと、何か柔らかい存在が、私を覗き込む気配を感じた。 (これも、憐れな命か?)  意識が流れ込んでくる。  ポルポラの召喚した、樹木の精霊だった。 (ポルポラの最期の願いを聞き届けた。憐れな命に、慈悲をと。  ーーしかし実際のところ、私にはお前が最も、憐れな命に見える)  精霊は、草が風に揺れるような音を立て笑った。  私は精霊に問うた。 (……貴方が、私にも慈悲を与えることを……ポルポラは、赦さないだろう)  その直接的な答えは返ってこなかったが、精霊は微笑んだ気がした。 (見事な花壇だ。丁寧に手入れされている)  花壇ーー花壇か。  屋敷の前に、私が作ったものだ。それは無事だったか、と安堵した。 (のう、お前は、すぐに自分に心を許したポルポラを、愚かだと思ったろう) (……ああ) (それは違うぞ。あの娘も、この花壇を見たのだ。  お前はおよそ悪人なのだろうが、樹木の精霊はお前が好きだ)  そして精霊は、ようやく私の質問に答えた。 (あの娘が我々に伝える言葉は、いつも抽象的で、戸惑う。  憐れな命が何を指すのか、とんと判らん。  しかし私には、お前もそれに含まれるように思う。  ポルポラはきっと、お前を赦すよ)
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