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全てはもう遅いが、今ならどうすべきだったかが分かる。
私はポルポラと、普通に、もっと語り合うべきだったのだ。
不死の秘術にこだわる理由を、打ち明けてみれば良かった。
千年の時を生きた彼女は、私が辿り着けなかった、別の答えを示してくれたかも知れない。
精霊の言葉を聞いてなお、私にその資格があるのかは自信がなかったが、図々しくも、私は願った。
(……もし私にも、慈悲をーー花に変えてくれるなら……その花にしてくれないか)
精霊は、訝しげに訊き返す。
(マリーゴールドか?
栄誉を求め続けた魔法使いの最期にしては、少々意外だ)
私は幼い頃の、母との会話を思い出していた。
ーー「母さんは、マリーゴールドが好きだから、こんなに植えているの?」
ーー「そうよ。それにね、この花はーー」
そして私は遠退いてゆく意識の中、精霊に最期の想いを伝えた。
(ああ、マリーゴールドが良いんだ。
ーーそれにその花は、薬になるから)
〈了〉
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