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気付けば私は、病院のベッドの上だった。
医者は、極度の過労だと言った。
「一ヶ月は安静にしていてください」
「そんなに待てません」
医者は、ため息をついた。
「あなたも医療関係者なら分かるでしょう?お母様の病気を治す前に、あなたが死んでしまう」
正直、疲れていた。
三日間徹夜は当たり前。ここ二週間の睡眠時間の合計は、十時間にも満たないかも知れない。
療養の為に私は再び、母が待つ村へと戻った。
「タゲス!」
憔悴した様子の母が駆け寄ってきた。私が倒れたことは、母に伝わっていたらしい。
抱きついてきた母の体は、以前にも増して骨ばっていた。この細い体に、どれだけの心配をかけてしまったのかと思うと、ひどく申し訳ない気持ちになった。
「あなたの功績は、この村にも届いてる。自慢の息子よ。でも頑張りすぎだわ。これ以上に、賞を取る必要なんかがあるの?」
私は新薬研究の傍ら、学会での論文投稿や発表など、自身の知名度を上げる為の活動も重ねていた。
「一番優秀な研究者には、スポンサーがつく。必要なことなんだ」
「また倒れてしまうわ。別にいいじゃない、二番だって、何番だって。あなたが優秀な研究者であることは、もう皆が知っていることだわ」
「……そうかな」
「ええ」
資金を集める為の功績作りが、余計な負担になっていたのは事実だった。
だから私は、その言葉に甘えてしまった。
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