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一ヶ月間の療養を終え王都に戻ると、それからは新薬の研究だけに集中した。
学会には姿を見せなくなった。
スポンサーから実績を作ってくれと言われれば論文くらいは投稿したが、新規性や独自性が以前より欠けたそれが、一番の功績を収めることは少なくなっていった。
そしてある日、スポンサーは言った。
「悪いけど、君との契約は解除させてもらいたい」
「そんな……どうしてですか?」
「君は、以前より研究者としての功績が下がっているじゃないか。この研究は君に任せてきたけれど、開発の権利を持っているのは私だ。今後は、他の研究者に引き継がせたい」
あまりにも呆気なく、切られた。
******
私の後を継いだ研究者は、私より優秀ではなかった。
だから新薬の完成は遅れて、私の母は助からなかった。
母は聡明な人であったが、最後の最後に誤ったのだ。
彼らに必要なのはやはり、一番優秀な研究者だった。
だから母の死は、私がその座にいる努力を怠った、罰だ。
私は母の墓前で、曇天の空に向かって叫んだ。
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