Marigold -3-

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 今度は私が、机に書類を置いた。 「再契約書です。  今の研究チームを解散し、私にあの薬を改良する主導権を渡してください。秘密は守りますし、それで得る利権は貴方に差し上げましょう」 「それでは一体君に、何のメリットが……。  そうか、それで我が社の薬に、変な物を混ぜるつもりだな」  男は私を睨め付けた。 「ははは、愉快な人だ。そんなことしませんよ。  でも貴方には、他にお願いがあるんです」  私は別の書類を取り出した。 「新薬の改良に協力するにあたり、二つ条件があります。一つは、私の故郷の村に、私が個人的な研究を行う為の邸宅を建てて頂きたい。これはその設計図です」  男は書類を受け取り、顔をしかめる。 「豪邸じゃないか」 「ご安心を。あの辺りの土地は安いですよ」  ぱらぱらと書類をめくり、地下階の構造に目を通した男は、さらに渋い顔をした。 「地下牢に……大型の培養装置が置ける空間?……何に使うって言うんだ」 「ええ、そこで、二つ目の条件です」  私は前屈みになると、男の目を見据えた。 「私と一緒に、不死の研究をしませんか?」 「なっーーそれは、禁忌だぞ」  男は狼狽して、書類を落とした。 「でも、やってみたいでしょう?成功したら、その見返りはリスクよりも大きい」  応接室にしばしの沈黙が訪れる。  男のか細い声が、沈黙を破った。 「……需要は、確かにある。しかし、発表できなければ意味が……」 「通常の製品の研究過程で、偶然に見つけた副産物であると公表すれば良い。  皆、不死に興味のない者などいない。  おかしいと思いながらも、誰も文句など言うはずはありませんよ」  男はたっぷり一時間迷った後。  最後は悪魔に魂を売ったような顔をして、私の条件に同意した。
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