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今度は私が、机に書類を置いた。
「再契約書です。
今の研究チームを解散し、私にあの薬を改良する主導権を渡してください。秘密は守りますし、それで得る利権は貴方に差し上げましょう」
「それでは一体君に、何のメリットが……。
そうか、それで我が社の薬に、変な物を混ぜるつもりだな」
男は私を睨め付けた。
「ははは、愉快な人だ。そんなことしませんよ。
でも貴方には、他にお願いがあるんです」
私は別の書類を取り出した。
「新薬の改良に協力するにあたり、二つ条件があります。一つは、私の故郷の村に、私が個人的な研究を行う為の邸宅を建てて頂きたい。これはその設計図です」
男は書類を受け取り、顔をしかめる。
「豪邸じゃないか」
「ご安心を。あの辺りの土地は安いですよ」
ぱらぱらと書類をめくり、地下階の構造に目を通した男は、さらに渋い顔をした。
「地下牢に……大型の培養装置が置ける空間?……何に使うって言うんだ」
「ええ、そこで、二つ目の条件です」
私は前屈みになると、男の目を見据えた。
「私と一緒に、不死の研究をしませんか?」
「なっーーそれは、禁忌だぞ」
男は狼狽して、書類を落とした。
「でも、やってみたいでしょう?成功したら、その見返りはリスクよりも大きい」
応接室にしばしの沈黙が訪れる。
男のか細い声が、沈黙を破った。
「……需要は、確かにある。しかし、発表できなければ意味が……」
「通常の製品の研究過程で、偶然に見つけた副産物であると公表すれば良い。
皆、不死に興味のない者などいない。
おかしいと思いながらも、誰も文句など言うはずはありませんよ」
男はたっぷり一時間迷った後。
最後は悪魔に魂を売ったような顔をして、私の条件に同意した。
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