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「わたしは総司です。沖田、総司」
自分の鼻を指しながら言うと、彼は聞いているのかいないのか、「ああ」だか「うん」だか言った。愛想がない。
「トシサン、わたしは先輩ですけど、うんと年下なので特別です」
狭い道場内をぐるぐる巡り、人や場所を紹介していた沖田は、突如そう言ってにこっと笑った。
「特別?」
「ええ」
沖田がトシサンのような人種が珍しいのと同じで、この青年にとっても沖田は異種生物らしい。
じろり、と沖田を見下ろす。
「敬語はいりませんし、なんならわたしのことは、総司、と呼んでください」
「……」
警戒していた顔が、一瞬、無防備になった。
見開くと思いのほか目が大きい。
三白眼のせいで、余計に目がまるくなる。
沖田はこっそり、目玉焼きができた、と胸中つぶやいた。
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