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一、馴れ初め。
石田散薬の人、トシサン、背が高い。
十五を迎えたばかりの沖田少年が知っている、土方歳三の数少ない情報は、その三つだけだった。
土方は無口で、あまり笑顔というものを容易に見せない。
師匠、近藤勇と話している時でも、近藤が大きな口を豪快に開けて笑っている傍らで、拗ねたような退屈そうな目で片あぐらをかいているという様子だった。
師が「トシサン」と呼ぶので、彼もしぜん、倣って「トシサン」と呼ぼうと決めた。
だが残念ながら、まだ面と向かって話したことは無い。
────その、トシサンが。
目の前で防具を付け、竹刀を片手に立っている。
開けられた戸から、初夏の風がざあっと吹き込んだ。
沖田は、閉じた瞼を上げた。
面金の下で、そっと上唇を舐める。
どっ、どっ、と心臓が早鐘を打っている。興奮していた。
直感。この人は、すごいぞ、と、思った。
「────始めッ」
二つの影が動いた。
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