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「酷いな、感動の再会じゃァないですか」
「感動も再会もあったもんか」
鼻を鳴らして顎を上げておいて、ツと視線をこちらに戻す。
「で、何考えてやがったんだ、総司のくせに」
「うーん……?」
総司は首を捻った。何か考えていた気がするが、すっかり忘れてしまった。それに、大したことではない気がする。
総司は重大でないことはすぐ忘れる。
それが、本人にとってのものさしで重大かどうかが計られるわけだから、時として人を呆れさせもしてきた。例えば、この土方歳三とかをだ。
「何でしょう。忘れてしまった」
「まァ、いい」
土方はぽつりと独りごちると、両手を袖口の下で組んだ。
今度は彼が何やら考えているらしく、背けた顔の先で、ぼんやりと黒い双眸が据わっている。
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