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「……」
何となく、邪魔をしたくなくて、総司も童子のように大きく首を傾けながら、袖口の下で腕を組み、同じ方角を振り返って見た。
祭りの提灯が、赤々と灯っている。それが夜闇と競うようにして、茫洋と赤を滲ませ、黒と赤がしぜん気分を高揚させる。
どっと衝撃があり、総司はよろけた。
「あっ」
機敏に踏みとどまる。
さっと視線を走らせると、総司の腰ほどの背丈しかない子供が、ぽかんとこちらを見ていた。
同じような顔の子供がふたり近くにいる。戯れているうちに気づかずぶつかってしまったのだろう。
「おっとっと」
総司は相好を崩し、おどけてよろけて見せた。
「夜更けまで遊んでいる悪い子はどこだァ」
「きゃーっ」
腰をかがめ、両手を顔のそばで構え獣の振りをする総司を見、三人はカン高い笑い声を上げて駆け出した。
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