40人が本棚に入れています
本棚に追加
「まったく」
笑いを含んだ声に、総司は振り返る。相変わらず腕を組んだまま、それでも少し脇に反れた場所で土方が苦笑している。祭りの灯りでほの赤く染まった顔は、陰影のせいかやたらとなまめかしい。
「今のであいつら、またぶつかるぜ」
「いいんですよ、子供だから」
笑いながら総司は隣に並ぶ。
「お前も子供のようなもんだろう」
「そうでもありませんよ。土方さんはわたしのことを幾つだとお思いですか」
今年でもう十九である。
九つ違いの土方などは二十八にもなっているが、それでも十九ともあれば子供ではない。というのが総司の考えだったが、
「十九だろうとな、子供だ、子供」
一蹴された。
口をとがらせ、何気なく前を見た総司は、ふわりと鼻腔をくすぐった香りに、例のごとく子供扱いされたことも忘れてカン高い声を上げた。
「土方さん、りんご飴ですよ!」
「それがどうし」
どうした、と言いかけた言葉はふいに途切れた。
総司に袖を引かれ、つんのめったのだ。
やっぱり子供じゃねえか、子供だ子供、とぐちぐち言うのが聞こえたが、総司は無視した。
最初のコメントを投稿しよう!