ニ、鬼も浮かれる。

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「まったく」  笑いを含んだ声に、総司は振り返る。相変わらず腕を組んだまま、それでも少し脇に反れた場所で土方が苦笑している。祭りの灯りでほの赤く染まった顔は、陰影のせいかやたらとなまめかしい。 「今のであいつら、またぶつかるぜ」 「いいんですよ、子供だから」  笑いながら総司は隣に並ぶ。 「お前も子供のようなもんだろう」 「そうでもありませんよ。土方さんはわたしのことを幾つだとお思いですか」  今年でもう十九である。  九つ違いの土方などは二十八にもなっているが、それでも十九ともあれば子供ではない。というのが総司の考えだったが、 「十九だろうとな、子供だ、子供」  一蹴された。  口をとがらせ、何気なく前を見た総司は、ふわりと鼻腔をくすぐった香りに、例のごとく子供扱いされたことも忘れてカン高い声を上げた。 「土方さん、りんご飴ですよ!」 「それがどうし」  どうした、と言いかけた言葉はふいに途切れた。 総司に袖を引かれ、つんのめったのだ。 やっぱり子供じゃねえか、子供だ子供、とぐちぐち言うのが聞こえたが、総司は無視した。
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