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土方は、布団にを半身を潜らせながら苦笑した。
視線の先には、子供のように奔放な寝姿を取る兄弟弟子の寝顔がある。近藤ほどではないが、小さくいびきをかいている。
(子供め)
額にかかる髪をのけてやると、こそばゆいのか、唸って眉を寄せた。
外は、静かだ。祭りの喧騒がまだ耳の奥でなっている内に、眠ってしまおうと思い、土方は布団を肩までずりあげる。
いつもならば目を閉じている所だった。
が、何を思ったのか、総司を振り返る。
もう十九になります、と言った男の寝姿は、あまりにもあどけない。屈託がない。
それを見ていると、自分も己を縛る窮屈な何かから、いっときでも離れることが出来るような、そんな気がした。
祭りの喧騒が遠い。
耳の奥でなっている。
枕元に置いたりんご飴のあまったるい香りが、あれが幻ではないと囁いてくれているようであった。
─終─
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