ニ、鬼も浮かれる。

7/7
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
 土方は、布団にを半身を潜らせながら苦笑した。  視線の先には、子供のように奔放な寝姿を取る兄弟弟子の寝顔がある。近藤ほどではないが、小さくいびきをかいている。 (子供め)  額にかかる髪をのけてやると、こそばゆいのか、唸って眉を寄せた。  外は、静かだ。祭りの喧騒がまだ耳の奥でなっている内に、眠ってしまおうと思い、土方は布団を肩までずりあげる。  いつもならば目を閉じている所だった。 が、何を思ったのか、総司を振り返る。  もう十九になります、と言った男の寝姿は、あまりにもあどけない。屈託がない。  それを見ていると、自分も己を縛る窮屈な何かから、いっときでも離れることが出来るような、そんな気がした。  祭りの喧騒が遠い。 耳の奥でなっている。  枕元に置いたりんご飴のあまったるい香りが、あれが幻ではないと囁いてくれているようであった。 ─終─
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!