三、つめたい手。

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「どれどれ」  かまやしない、とばかりに土方の冷え切った手を引っつかみ、総司はそれをじっと見る。  思ったよりも小さいな、と思った。 剣をやるだけあって、総司の手は小柄ながらにつくりがしっかりしている。  その手に包まれ、いまや鬼と呼ばわれるこの兄弟弟子の手は、やけな頼りなく見えた。 「鬼の手がこんなに綺麗なもんか」  呟いたのは、どうやら聞き取られずに済んだようだ。 訝しげにこちらを見る目がやけに面白い。  鬼がこんな澄んだ目をするもんか。  総司はフフと声を漏らし、土方の左右の手を両側から挟み込んだ。ぱん、と乾いた音がする。 「うん、どうやらよごれは取れたようだ。上手に洗えましたね、歳くん」 「お前ってやつは」  虚をつかれた様子だった土方の顔が、呆れと苦笑に歪む。 それが総司には、安堵しているように見えた。 「何を考えているかと思えば、それか」 「何を考えてもいやしませんよ」  たははと笑い、総司は下駄を放って室内へ駆け出した。  総司の手はつめたい。鬼の手だ。 ─終─
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