四、馬鹿の夏風邪。

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「飲み水と、それから桶に水を貰いたくて」 「お待ちを」  一瞬、奇妙な顔をされたが、すぐに彼は奥へ引っ込んで行った。 「これでよろしゅうございますか」 「ありがとう、助かりました」  大きな盆に載せてある。 桶の横には清潔な手ぬぐいが置かれていた。気の利く青年である。  盆を手に、早足で副長室へ引き返す。 先を急ぐ総司を珍しがり、何度かすれ違う隊士に声をかけられたが、曖昧に笑って誤魔化した。 「総司です。失礼しますよ」  言いながらふすまを開け、総司は室内へ踏み入れた。  外は少し暗い。一雨来そうだ。盆を畳に置き、雨戸と障子を閉めた。 土方はまだ眠っているらしい。
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