四、馬鹿の夏風邪。

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「ふだんが足りないんだ、馬鹿」  小声で彼の口真似をして、額を小突くふりをする。  蒲団に包まって眠る顔は、赤い。 もとが青白い顔だから、紅潮するとよけい病的に見える。  総司は手ぬぐいを桶水に浸し、きつく絞るとその赤い額に載せた。横臥する土方の隣に腹這いになり、寝顔をじっと観察する。 (うるせェ、あっちへ行ってろ) (いやですよ) (お前がうろちょろしてると、治るもんも治らん) (こちとら看病してやってんだ。我慢なさいな)  頭の中の土方と会話をする。
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