四、馬鹿の夏風邪。

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「山崎さんにも言いましたが、わたしに伝染ったらあきらかに土方さんが病原菌なので、きちんと世話をしてもらいますからね」 「おれァ忙しいんだ」  朝にも言ったようなことを言う。 ひどいな、と不貞腐れたふりをしながら、総司は枕元に置かれた風呂桶に指先を浸した。すでに冷えている。  少しの間で水風呂になってしまう風呂をいそいそと持って行った山崎の淡白な顔を思い出して、やはり山崎さんは可哀想だな、と思った。  ────翌朝。京都壬生寺の一角。 「へぇっくしゅ!」  豪快なくしゃみが響き渡った。  副長室に並んだ達磨が二つになったことは、もはや言うまでもない。  昼頃賄い方の青年がたまごふわふわを二つ持って来てあれこれと言っていたが、監察の方にも一つ持っていかなきゃならん、といったようなことを総司は夢の中で聞いたような聞かないような。 ─終─
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