39人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
問うた瞬間、誰かが笑った。吹き出した。
それがトシサンだと気がついた沖田は、何かを言いかけたような口のままぽかんとした。
｢なんだそれは。嫌味か｣
まだ笑っている。
やっと沖田の吃驚しているのに気が付き、眉をしかめた。
｢おい、どうした｣
｢あっははは｣
今度は沖田が笑う。脱力している。
｢あーあ……いえね、どうやら異国人も人間のようだからさあ｣
｢何の話だ｣
｢トシサンの｣
彼は、沖田からトシサンと呼ばれるのを好まないらしい。
言う度、柳眉がぴくりとする。
しかし何故か、やめろと言わない。言うまで言ってやろう、と沖田は密かに思った。
｢それにしてもおかしいなァ、わたしは殺される、と一瞬でも思ったって言うのに｣
笑いながら、頭を掻く。
勘違いだったのだろうか、すべて。この人は強いと思ったのも、まだ片鱗しか見ていないというのも。
最初のコメントを投稿しよう！