一、馴れ初め。

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「でもやはり、あんたはわたしより強いと思います」 「まだ言ってやがるのか」  ええ、と沖田はおどけた顔をしてみせる。 「わたしはね、土方さん」  春のぬるい風が素足の指先をくすぐるのが心地よい。 「あんたの眼がすきだな」 「はあ?」  土方が振り返った。何を言ってやがる、と顔に書いてある。沖田はけらけら笑った。 「向き合った時、あんたの眼が見えたんですよ。あ、殺されるって思うような、こう……なんていうんですかねえ、野生の獣に対峙してしまったような」  それがすきなんだな、と沖田は独り言のように続ける。 「腹が減りましたね、土方さん」  沖田の話はいつも突拍子もない。 思いついた側から内に留めることなく吐き出されるかのように、筋というものが通っていない。  土方はとっくに知っているから、がしがしと後頭部を掻くと、伸びをした。 「腹が減ったな、総司」 「それはさっきわたしが言いました」 「うるせえ。おれァ今腹が減ったんだ」 「はいはい。行きましょうか」  言いながら、素足に下駄を突っかける。  日に焼けた焦げ茶の髪が揺れて、同じ高さの土方の頭を追い越した。 「総司」  呼び止める声に、沖田は振り返ることなく足を止めた。 「はい」 「……」  黙する土方を、ようやく沖田は振り返った。土方はふっと笑う。どこかくらい笑みだった。 「なんでもねえ」 「そうですか」
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