天使のココロ。

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――― ―― 神より与えられた仕事をこなす。それがぼくたち天使の役割だ。神の手で直接誕(う)み出されたぼくたちは、それ以上の存在でも、それ以下の存在でもない。 神から命(めい)を受けて、神に代わって行動する。それはとても名誉で誇らしい事だが、完璧にこなすというのは非常に大変な事でもある。実際、『自分には無理だ』と諦めて、その役割を降りてしまう、というような者も少なくないらしい。 ――情けない。 ぼくはポケットからメモを取り出して、いつものように今日の仕事を確認する。そのまま、ぶわ、と音を立てて、背中の翼をひろげた。 ――真っ白い、大きな翼。 翼の色や大きさ、形を見れば、その天使がどのくらい優れているのか、ある程度把握する事が出来る。仕事をうまくこなせばこなすほど翼は美しくなり、逆に失敗すればするほど、翼は醜く変化するのだ。 言うなればぼくたちの翼は『神にどのくらい認められているか』を知る指標であり、美しい翼を手に入れる事こそ、ぼくたちの目的であり、喜びであり、そして、すべてだった。 「…………」 飛びながら、彼女の顔を思い出す。 名前すら知らない――いや、あれだけ下級の天使ならば、そもそも名前を与えられているのかどうかすら怪しいが――あの彼女の笑顔が、言葉が、脳裏に浮かんだ。 ――今日は、悪行日和ですね。 「…………」 くだらない、と思う。それに神は悪事を決して見逃したりはしない。 そんな事を言う天使は、さっさと堕天使となって、地獄にでも堕ちてしまえばいい。――口の中で、そうつぶやいた。
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