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―――
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彼女と会わなくなってからまたずいぶんと長い時間が流れたが、ぼくは今日も相変わらず、いつものように、いつもの仕事をこなしていた。
背中の翼はさらに美しく、一段と立派になり、純白の羽は光を帯びているようにさえ見える。
――ただ。それだけだった。
「……今日は、悪行日和ですね」
人々をやさしく見守りながら、いつか聞いた言葉を意味もなく口にしてみる。今日は天候もよくて風もなくて、あたたかくて――それこそ神様がうたた寝でもしそうな、そんな気候だった。
「…………」
もしかしたら、またどこかの天使が、何か悪い事をしようと企んでいるかもしれない。
醜い姿をした、けれど本当のココロを持った、やさしくて美しい、『本当の天使』が。
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