死にたいと思う人

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死にたいと思う人

なぜまだ生きているのか。何度目かもわからない程繰り返した動画を流したスマホを前に今まで何度も自問し続けたことが脳裏を過ぎる。苦しい。自分の呼吸が浅くなるのを感じた遥はたまらずベランダに出て東京の夜の冷たい空気を肺に取り込んだ。  「これ以上私を振り回さないでほしい」  一か月前に仕事の都合で横浜に越した彼女に先週、突然振られてから遥は飲み物しかとっていない扱けた顔でふと空を見て自殺を想像する。 だれが葬式に来てくれるだろうか。彼女は来てくれるだろうか。もし死んだら自分は彼女の記憶の中に生き続けることはできるだろうか。もうこれ以上生きて喜びを見つけることはできないのではないか。彼女を失ったことを痛感した。しかし遥は実際に死のうとは思えず、そのまま部屋に戻り布団に入った。  遥はなぜ自分が死を望みながら生をも望むのかを目を閉じて考えた。自分が生に執着しているのか、それとも生が執着しているのか。この疑問が晴れるときは生きる決意をしたときか死ぬ決意をするときなのだろうか。そもそも自分は死を望んでいるのだろうか。もしかしたら人は将来に対しての漠然とした希望を失ったら真に死を望むのかもしれない。  遥はもしかしたら自分はまだ今後の生活で幸せを見つけれないとははっきりとは思っていないから死のうとは思わないのかも知れないと思いながら部屋の明かりを消した。 
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