他人(ひと)の幸せ

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他人(ひと)の幸せ

「自分の幸せばかりを尊重して他人の幸せを奪うな。」 遥は心の中で憤怒した。遥は遊びに来た高校生からの友達らの発言に対して怒りを覚え、露わにこそしなかったが、その後も友人らのその言葉が永遠と頭の中で繰り返され、結局全く楽しむことができないまま解散となった。 どうして彼らは易々とあんなことが言えたのだろうか。ふとその日の夜に遥は彼らの発言を思い出した。昔の彼らならあんなこと言わなかったはずだ。どうしてあんな風に変わってしまったのだろうか。それとも彼らではなく自分が変わったのだろうか。自分がエゴイストに成り下がり、もしくは元々そうであっただけなのだろうか。最大幸福論者である遥は誰しもの幸せは尊ばれるべきであると考え、遥は不倫だとか浮気だとか、他人の幸せを奪う行為を認めるような彼らの発言がどうしても許せなかった。 その時、もう一つの恐怖が遥を襲った。もし、彼らの考え方が世間一般的には全くもって普通のものであったとき、自分はどう生きていくべきなのだろうか。自分の主張を変えてでもこの世界で生きていくべきなのだろうか。これ程までに生きづらいのなら、自分の信じるものを失うことになっても世間に合わせるべきなのだろうか。 やはり答えは出ないまま、遥はそのまま眠りについた。
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