一行の謎

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一行の謎

 厳島神社の参拝入り口は、相変わらず大勢の観光客で混雑していた。内侍さんの言ったとおり、入口の左右に立つ石燈籠の上には金属製のカラスの像がちょこんと乗せられていた。互いに向き合うように内側を向いている。ここに次の場所への手がかりがあるはずだ。  四メートルくらいの高さがある石燈籠なので、地面からは上部に手が届かない。背後にある一段高くなった通路に上って覗きこむと、灯火の入る火袋の部分に何か丸っこいものが置いてあるのが見えた。  左右をちらりと見てから火袋に手を伸ばす。つかみ取ったのは直径五センチほどの木製の球体だった。上端がドラクエのスライムみたいにぴんと尖っている。真ん中あたりの円周部分に水平に細い線が走っていた。上下に手をかけて捻ると、くるりと回って二つに分かれる。内部の空洞に折りたたんだ紙が入っていた。広げてみると一行の文字が書かれていた。  『日和の間に招き入れ 手を取った世に遷されし』  それが、次の場所への手がかりだった。
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