一行の謎

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 問題文を広げる。  『日和の間に招き入れ 手を取った世に遷されし』  日と招の字が大きく書かれているのは、この文が平清盛についてのものであることを示しているのだろう。では場所は一体……。 『間に』が気になる。そして、閃いた。 『招』の文字を、『日』と『和』の間に入れる。そして、『手』偏を取ると、問題文は、 『昭和(の)世に遷されし』となった。  おじさんが昭和について何か言っていた。そう、西松原は昭和の水害の土砂で延長されたと、だとすれば……。  俺は内侍さんに尋ねる。 「平清盛は西松原の清盛神社に祀られているのですか?」 「ええ、そうですよ」 「清盛神社は昔から西松原にあったのですか?」 「昔からって……、そもそも他のご祭神と一緒に三翁神社(さんのうじんじゃ)に祀られとった清盛公を清盛神社を創建してお(うつ)ししたんじゃけど」 「それはいつのことですか?」 「いつって……」  内侍さんは首を傾(かし)げる。 「清盛公の没後七百七十年の創建されたんれたんじゃけぇ。いい国(1192)作ろぉの何年か前として……、千九百五十五年くらいかねぇ」 「ありがとうございました!」  俺は足元の生き物を踏みつぶさないように気を付けながらも、できるだけ早足で砂浜を進んで、参道に戻った。参道を全速力で駆け出す。目指すは清盛神社だ。
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