一行の謎

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 そもそもの始まりは、瑞紀(みずき)からの誘いだった。宮島の実家に帰省しているからこっちに観光に来ない?ついでに家族にも紹介したいからと。『ついで』の方が本題なのは明白だったが、そろそろ潮時かと思って誘いに応じたのだった。ところが約束の桟橋に瑞紀は現れず、『歓迎会の準備をして待っているから会場まで来てちょうだい。道順はクイズで案内していくわ。しっかり考えてね』とのメールが送られてきた。そうして、島内を歩き回りながらの謎解きがはじまったのだ。これが二つ目の謎になる。  改めて文をにらむ。手書きの文字で、日と招の字が他の字よりも少し大きく書かれている。この文がどこかの場所を示しているのだが、それはいったい……。  何度読み直しても思いつくものが無かった。とりあえず関係しそうな場所に行ってみることにする。  文の最初に『日和の間』とある。これは、『ひよりのあいだ』と読むのか、それとも『ひよりのま』なのか。『日和』には晴天とか、船路に適した天候とかいう意味があったはずだ。日和の(あいだ)に招くのだとしたら、船が入る港なのかもしれない。対岸からのフェリーが到着する宮島桟橋に行ってみよう。
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