一行の謎

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 人力車は宮島桟橋に到着した。おじさんは桟橋に隣接する広場の端に人力車を止めた。 「毛利元就の厳島の合戦は、そこの銅像の平清盛(たいらのきよもり)公の厳島神社の社殿造営、神社護持と並ぶ歴史上の二大トピックスなんよ」  おじさんは広場の縁に立つ銅像を指さした。豪華な袈裟を着た僧形の人物が手に扇を持って立っている像だ。 「お坊さんの恰好をしていますけど?」 「ああ、清盛公は平家の棟梁なんで公家で武将、政治の実権を握ったまま出家したから僧侶でもあるんよ。この銅像は僧侶の姿じゃが、航路の開削をされた音戸の瀬戸に()っとる銅像は公家の衣装を着とる。扇を広げて(たこ)ぉ掲げた姿じゃ」 「いろんな顔があるのですね」 「ほいじゃけぇ、たびたび大河ドラマで取り上げられて、そんたびに宮島の観光客が増えるんじゃ。毎年三月に、ここから西松原(にしのまつばら)の清盛神社まで平安時代の扮装で行列する清盛まつりをやっとるよ」  おじさんは広場の前にある小高い丘を見上げた。 「じゃあ、城跡を案内したげるけぇ」
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