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未知の国へ
何重にも層になった分厚い雲がおりなす陰鬱な世界。昼間だというのに夜の帳の如く、シュタームは影の浸食を受けていた。ときおり雷鳴がとどろき、町の通りに湿気を含んだ生暖かい風が吹き荒れる。雨や雷どころか悪魔が降臨しそうな雰囲気だ。
朝、とあるアパートの屋上にある木の板で作った簡素な自宅でナッチは目を覚ました。無色になった水晶を手にして眺める。彼女にとって縁起の悪い物だ。さっさと売って金にしよう。そして、この町の封鎖が解除されたらほかの町へ行って、欲しかった化粧品を買いあさろう。彼女はそう思って裏市場にある骨董屋へむかった。
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