ドタバタ捜査

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室内のリビングは壊されていないものがないほどに荒れていた。壁中に血しぶきが飛び、ありとあらゆるものが破壊されている。激しく争った形跡がそのままの状態で残されていた。フローリングの床を埋めつくす破片類を、散らばった多数の本やノートが覆っている。 「派手にやってんな。一件目はあんなにスマートに事を起こしてんのに。本当に例の殺人鬼の仕業なのか?」 ルンペルは彼女の肩に手を置いて答える。 「同じみたいだぞナッチ。被害者の殺されかたが一致してるらしい。」 「なるほど。それはいいとして、恋人気取りで馴れ馴れしく触るなバカ殺すぞ。名前も呼ぶなバカ殺すぞ」 「あ、へい」ルンペルは悲しげに床に目を落とした。  その時、床に転がっていた壊れた水晶が帯電していることに彼は気づいた。 手を伸ばそうとしていた彼をナッチが制止する。 「触ったら感電するぞ。こっちまで感電するから触るなバカ」 「なんだこりゃあ。魔術具か?」 「犯人が使った雷撃魔法だろうよ。氷と雷撃の戦いなら現場もこうなるわな。犯人が雷撃魔法使いだとして、なんで貴族じゃなくて魔法使いの家を狙ったのかが謎だな……」 「そもそも、凄い氷結魔法使いなんだろう? そんな相手をどうやって殺すんだ?」 「どんなに強力な魔法使いであろうと、刺されりゃ死ぬ。ジジイならぶん殴られただけで死ぬ。問題はどうやってそこまでもっていくかだ。手練れの魔法使いなのか……?」 「貴族を専門に襲ってるなら、強力な魔法具のひとつやふたつはあるだろう? 盗賊だって大物となりゃあ、たとえ騎士の精鋭であろうとも簡単には手が出せないんだぜえ?」 「なんにせよ。敵は氷結魔法使いを殺せるだけの実力があるんだ。そんなやつを相手にするのかい? しょぼい水流魔法使いのあたしと、草花をはやして、木を台車にするようなブタで?」  彼女の言葉にルンペルは頭を抱えた。「勝てる気がしねえなあ……」
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