未知の国へ

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ポニートが廊下を歩いていると、窓の外の騒ぎに気がついた。三日前に解き放った盗賊の片割れが、二人のメイドによってボコボコにされている。腫れぼったい顔がさらに膨れあがり、血だらけの満身創痍になりながらも、長くのばした芝生や樹木を巧みに操りながら抗っている。 謎すぎる状況に彼は窓に顔を押しつけて、戦いの行方を見守った。 領主がみつめるなか、ルンペルはついに力尽きて膝をつき、戦いを後方から眺めていたメアリーが口を開いた。 「三日間――そろそろ死ぬ時間だねえ。トドメはわたしが刺そうかね」 手にした紫の雷球がうなりをあげる。無慈悲に放たれた雷球に、ルンペルは白に染まる視界にナッチの背中がみえた気がした――。 地面から噴きだす濁流が雷球を受けとめて、明後日の方向へ飛んでいった。 「てめえ、うちのブタになにしやがる!」ナッチが叫んだ。 彼は呆気にとられた。ナッチは振り向いて彼に口角をあげて笑いかけた。彼女だ。彼女が庇ってくれた。助けにきてくれたんだ。ルンペルは天使の存在を垣間見た気分だった。 「なにって、犯人を捕らえられなかった代償ですよ。約束でしょう?」  ババとカカが怒鳴る。 「そうだ! 約束だからな。お前も領主の命に従って処刑する!」  ナッチは赤い玉をメアリーにむかって投げつけた。「犯人なら、ちゃんと連れてきたぜ!」  玉を受け取ったメアリーは、すぐさま赤い光に包まれて、たちまち化けの皮がはがされた。赤毛で十五歳程度の姿をした女。殺人鬼メアリー・リードの登場だ。 ババとカカはようやく状況を察して、メアリーに襲いかかった。氷が砕け、鋼鉄の槍が飛び、紫電が走る。その間、ナッチはルンペルに駆け寄り、無事を確認した。命に別状はないようだ。
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