未知の国へ

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「ナッチ。良い作戦を思いついた」 「まず礼をいえブタあ。それに、あんたが絞りだしたカスに命を賭けろってのか」 「ああ、きてくれてありがとう。それより本当にいい作戦なんだよ。とりあえずな……」 ナッチが思った通り、成功率の低そうな作戦だ。しかし、彼女にもこれといって作戦はない。水と雷では土台、相性が悪すぎる。 「あんた……神頼みにもほどがあるぞ」 「いいや。必ず成功する。においでわかるんだ」  しょっぱい作戦会議が終わるころ、メイド二人が感電して倒れていた。 「ははは。雑魚がわざわざありがとよ。おかげで元の姿に戻れた。ご褒美に雷撃をプレゼントしてやる」 メアリーが高笑いする。ナッチは距離をとり、ルンペルは相棒を庇うように大木を庭に生みだした。 高熱の雷撃を相手に盗賊は雑草と木の剣で挑む。当然まともな戦いにはならない。ルンペルは距離を保ちながら、ひたすらに避けつづけなければならない。荒れ狂う雷撃を紙一重で避けては木を投げつけたり、増殖する草で防ぐ。    その間、ナッチは円を描くように動いて援護に回る。彼女はルンペルの作った木の弓で水の矢を殺人鬼に放った。はじめは当たらなくとも、次第に狙いは研ぎ澄まされてゆく――やがて、数本に一本がメアリーに命中するようになった。  無論、水はあくまで水でしかない。できることは殺人鬼の顔をびしょびしょにするだけだ。 雇ったメイドが殺人鬼であると知り、固唾をのんで見守るポニートの眼下で、なんとも情けない戦いが繰り広げられている。火を噴くドラゴンに唾で戦う鳥のようだ。そこへ、目が覚めたウマーとシカーがこそこそとやってきた。 「ポニート様! なんでか知りませんが奴です! 援軍を要請するべきです」 「騎士団に通報しましょう! あんな悲しい魔法では、どうせ彼らは負けます!」  衛兵の進言に彼は首を振った。 「それでは、わたしが捕らえたことにできんだろう。……まあ、万が一を考えて、衛兵団を近くまで呼び寄せておけ。彼らは私のヴァンガード(先鋒)だ。わたしはもうすこしだけようすをみる」
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