未知の国へ

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次の日の朝。盗賊二人は領主の小城からでた。昨夜は豪勢な食事と寝室を与えられ、一生分の贅沢を楽しんだ。ポニートは箔がついたと大喜びしている。 「君らわたしのもとで働くつもりはないか? 事件捜査をヴァンガードとして君らを派遣するんだ。事件を解決すれば、相応の報酬はだすぞ」  二人は顔をみあわせて断った。箔とやらのために命をかけたくない。 それから、二人が雑談しながら大通りを歩いていると、背後で衛兵の叫び声がした。 「ナッチ・フェスカー! 昨日、魔術師を襲って魔力を恐喝した罪で捕縛する!」 その声に彼女はルンペルに笑いかけた。 「ルンペル。あたしらの関係もここまでだ。ここらで失礼する。短い間だけど、楽しかったよ」 そういって駆けだそうとする彼女の手を彼は掴んだ。「ナッチ! フランジアに一緒に行こう! きっと、もっと面白いはずだ!」 彼の真剣な眼差しをみつめる彼女は、すこしの間をおいて、駆け寄る衛兵に水流魔法を浴びせた。 「行くか! フランジア!」 その手を繋ぐのに鎖は不要だ。二人はともに、遠くの王国を目指して走った。
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